単一特許: アイデアをEU全体で保護

単一特許制度の計画が作成されるよりずっと以前から、欧州の特許保護は存在しています。 従来の制度では、企業および発明者は、欧州特許庁(EPO)に欧州特許(EP)を申請します。 この特許は、欧州の国々の特許をまとめたものです。

個々の国で特許に有効性を持たせるには、それぞれの国で、個別に特許の有効性を確認する必要があります。 もし、どこかひとつの国で特許に異議が申し立てられたり、権利が譲渡されたり、行使されたり、無効化されても、他の国の特許の法的地位には、影響しません。

単一的効力を有する欧州特許(「単一特許」)は多少異なります。 統一特許保護が付与され、当制度に参加するすべてのEU加盟国で、同じ法的効果を持つことになります。 ライセンス供与に関しては、1つだけ例外があります。 ライセンス供与は、地域により制限される場合があります。

オプトアウト申請をすることで、従来の欧州特許を取得することもできます。 単一的効力を有する欧州特許、従来のEP特許の束(例: EU非加盟国、スペイン、ポーランド、クロアチアなどのUPC不参加国)、国内特許を組み合わせることも可能です。

The Unitary Patent

単一特許必須事項

シンプルかつ包括的: 単一特許の申請

単一特許の申請は、比較的簡単です。 まず、欧州特許庁(EPO)に欧州特許(EPO)を申請します。 申請は、文書もしくは電子文書にてEPOに提出します。その際、フォームおよび内容が特許性要件を満たしている必要があります。

EPが付与されたら、「単一的効力の要求」を提出できます。 この手続きは、欧州特許広報で特許の付与が発表されてから1ヵ月以内に、行う必要があります。 この申請により、EPOが一元的に行う一度の手続きで特許を取得することができます。将来的には、24のEU加盟国で単一特許保護を受けることができるようになります。

EPOには、単一特許の法的ステータス、ライセンス供与、権利の譲渡、制限、取消し、失効に関する情報が記載された新しい登録簿が存在します。 特許権者は、権利の譲渡およびライセンス供与をEPOで一元的に登録できます。 これにより、各国での国内特許登録において並列手続きを行う必要がなくなります。

EPOは、単一特許の取得、保持、管理に関する情報を、ひとつにまとめた有益なガイドブックも提供しています。

単一特許が適用される範囲は?

将来的には、単一効特許(UP)により、最大24のEU加盟国において統一された保護と同じ効果が得られることになります。 これまでのところ、17カ国が統一特許裁判所に関する協定(UPCA)を批准しています(2023年8月現在)。

さらに8ヵ国のEU加盟国がUPCAに署名しているため、それらの批准、すなわち国際法上拘束力のある確認がなされる可能性が高いと思われます。 イギリスは、欧州連合離脱(ブレグジット)により、批准を撤回しました。 スペイン、ポーランド、クロアチアは、さまざまな理由により、現在のところ、単一特許制度に参加していません。

つまり、特許権者にとって、次のことを意味します。 現在のところ単一特許は、17ヵ国のUPC参加加盟国で有効ですが、今後は24ヵ国に拡大される予定です。 ただし、今後新たにUPCAを批准する国が現れたとしても、すでにある特許の保護が自動的に拡張されるわけではないことに注意が必要です

単一特許にかかる費用は?

単一特許にかかる費用は、多くの場合、従来の欧州特許(EP)よりも安くなります。 EPには、年間費だけではなく、有効化および保持費用もかかるからです。 これには、特にEPの場合、翻訳料金、各国の特許庁にに対する手数料、各国の弁護士や他のサービス業者に対する手数料などが含まれます。 

これらすべてのことを考えると、単一特許は、4ヵ国以上の参加加盟国で有効化および保持されるEPよりも一般的に安価です。 より多くの欧州国で知的財産権戦略を展開しようと考えるほど、単一特許を申請することに意味があることを意味します。

例えば、EPOの概算によると、有効化され維持された特許が最も多い4ヵ国で12年間にかかる従来のEPの費用は、合計€ 11,850になります。 それに対し、同じ期間における単一特許の年会費は多少高くなりますが、取引コストが安くなります。 そのため、単一特許の費用は、€11,260になります。 つまり、従来のEPに比べ、5%のコスト削減が可能になります。 特許の保持期間が15年の場合、コスト削減の割合は8%に増加します。

また別の利点としては、特許権者としての安心感です。 単一特許の年会費は単一通貨で一元的にEPOに支払われます。 つまり、各国の特許庁に、個別に支払う必要はなくなります。

単一特許: メリットとデメリット

単一効特許(UP)を利用するのか、従来の欧州特許や国内出願にこだわるのか、あるいはケースバイケースで特許ごとに最適なルートを選択するのか、その決定は個々の特許戦略によって支配されます。 単一効特許(UP)には多くのメリットがあります。 例えば、現在のEU17カ国(最大24カ国になる可能性もある)で一律に有効であり、国境を越えて施行できるという事実があります。

さらにコスト削減、管理業務の削減も、この新たなシステムの明確なメリットです。

しかし、UPCがカバーする領域全体に特許を拡張することを望まない場合、もしくは国内手続きの予測可能な品質を維持するほうが良いと考えている場合、現時点ではUPCは適切な選択肢ではないかもしれません。そのため、従来の特許保護手続きを検討することをお勧めします。 選択肢を検討する際には、UPCには一元的に無効になってしまう可能性もあることを念頭に置置く必要があります。

どのように決定するにせよ、特にドイツのUPC機関では高い専門性が期待でき、紛争が発生した場合にも法的に確実に特許を行使することができます。

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